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2022年04月号
 今回も『南海トラフ地震臨時情報』(以下「臨時情報」)が発表されたら「どう構え、どんなことを確認すれば良いのか」について考えていきましょう。
臨時情報とは、激甚な被害をもたらすと想定される地震・津波が一定の期間内(1週間程度)に発生する可能性が通常よりも高まっていることを社会に警告するために、気象庁が発表する情報です。
 まず、臨時情報の発表を聞いた時点の場所で、対応は大きく変わります。和歌山県・高知県など津波が短時間(地震から3~5分)で到達する地域、我々が住む加古川(予測津波高2.2m、到達時間113分)のような瀬戸内海に面した地域、標高の高い山間地域では、それぞれ対応方法に違いがありますが、いずれの場所でも共通なことは「強烈な揺れに襲われる可能性が高い」もしくは「強烈な揺れに襲われたが再度猛烈な揺れが襲う可能性が高い」ということです。
 「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表された場合は、南海トラフ地震の監視領域内でM6.8以上の地震が発生し、南海トラフ地震との関連性について調査を開始する場合であれば「強烈な揺れに襲われたが再度猛烈な揺れが襲う可能性が高い」と考えられます。また、想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合など、南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる場合は「今後、強烈な揺れに襲われる可能性が高い」となります。 「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」発表の場合は、監視領域内でM7.0以上の地震が発生した場合に発表され「強烈な揺れに襲われたが再度猛烈な揺れが襲う可能性が高い」ということになります。また、想定震源域内のプレート境界面で通常と異なるゆっくりすべりが発生した場合にも発表され「強烈な揺れに襲われる可能性が高い」となります。
 「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」発表の場合は、想定震源域内のプレート境界でM8.0以上の地震が発生した場合に発表され「猛烈な揺れに襲われたが再度猛烈な揺れが襲う可能性が高い」となります。
 いずれの場合も「臨時情報の発表」を見聞きしたならば最大限の構えの体制に入らなければなりません。
 次のような意見もあります。「煽るようなことを言うな!」「メディアでは取り扱いが少ないから嘘くさい話だ!」等々。我々自主防災が目指すのは『構えたい人が構えるお手伝いとなる情報』をお伝えさせて頂くことです。特に巨大地震では、地震が発生した瞬間に、他者を助け・救い・人命を守るなんて正義の味方のようなことは不可能なのです。また、臨時情報がメディアでの取り扱いが少なかったり、行政からのお知らせも少ないのは、メディアの人が防災に勉強不足で『臨時情報を知らない』から、スルーしているケースが非常に多いのです。また、行政も同じで防災担当の職員が『臨時情報の言葉を知らない』こんなことも大きく影響しています。『南海トラフ地震臨時情報』は、2019年5月からの運用で日が浅く、国だけではなく各都道府県や市町村の現場に浸透していない上に「不確実性が大きい」という面があります。
 NHK番組『視点・論点』「南海トラフ地震「臨時情報」で起きること」で、京都大学防災研究所の矢守克也教授が仰ったことを引用させて頂くと(下記)
 地震発生の可能性が事前に指摘されるわけなので、沿岸部に居住する津波避難困難者が事前避難する等すれば、非常に大きな被害軽減効果が期待できる。最悪の場合、10万人をはるかに超えると予想される犠牲者数は激減するともいわれています。しかし他方で、この情報の不確実性は残念ながら非常に大きいです。 内閣府が発表した「臨時情報に関する防災対応検討ガイドライン」によれば「一部割れ」と呼ばれるケースの場合、臨時情報が発表されたあと1週間程度の間に実際に地震が起きる可能性は「数百回に1回程度」に過ぎず「半割れ」と呼ばれる後発地震が発生する確率がより高いケースでも「十数回に1回程度」とされている。要するに、目安とされる臨時情報発表後1週間程度の間に地震が実際に発生するのは多くて10回に1回くらいに過ぎない。臨時情報は十中八九以上外れる情報だということになります。しかも仮に情報が発表されれば、企業活動、教育・福祉サービスの抑制・停止等による社会・経済面への影響も非常に大きく、いい加減なウワサが広まったり、物資の買い占めが起きたりといった社会的混乱も心配されます。このように「臨時情報」は両刃の剣。プラス面もあれば、マイナス面もある。ですから臨時情報を有効活用するためには、その光の部分を大きく引き出し、陰の部分を抑えるべく、関係者の事前協議や合意形成など、社会の側の周到な準備が不可欠です。
と語られています。
 その為にも「心の訓練」「構える準備」をやりましょう。訓練や準備ができている人は、もし『空振り』になったとしても笑って安堵できるのです。逆に訓練や準備を怠っている人が『空振り』に対して激怒される傾向にあると考えられています。
・・・続く