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2022年02月号 |
前回に続き、クローズアップされた大切な避難方法である『二方向避難』から考えましょう。 二方向避難は、避難する途中の行き着く先々で二方向避難(選択)を余儀なくされます。ここがダメなら次へと。じっくり考える余裕なんてありません。短時間での判断となります。その判断力を養う為にも日常の中で想定訓練をやっておくことをオススメします。ただし、その想定訓練の中で「どんな場合も、すべて避難できた」では問題があります。被害が発生するのは、あなたが知らない事象(想定を越えたこと)が発生した場合です。あなたの知らないことが目の前で発生した時「逃げる」という判断には至らず、「えっ何が起こっているの?」と次へのアクションが遅延します。この遅延が命に関わっているということが近年多発しています。多くの人は防災訓練や消防訓練に参加した経験があるでしょう。その経験で「一度、見聞きすれば、もう判った!」となっている人が多いようです。ここには皆が疑問を抱き続ける、ある訓練が罠となっているのです。そうです!小学校の頃の消防訓練です。その多くは最上階で発生しています。これは避難訓練をスムーズに進行させるためでもあり、出火場所を不審火や放火によらない場所にしていること、はしご車のデモンストレーション(訓練参加)をするには4階が適当だということなどもあったようです。現在発生する火災で避難が遅れると考えらるものは「放火」「不審火」です。このような火災は、意図的に避難を妨げる目的を強く持っており、通常の火災よりも避難が困難になっています。特に我々の子どもの頃には考えも及ばなかった火災「ありっこない火災」が近年多発しているのが現状です。訓練が可能であるならば、1階の階段前で火災発生!この場合、どこへどのように避難させるのが良いのかを考えることも重要な避難訓練となるでしょう。お叱りを受けるかも知れませんが、廊下を喋らず静かに一列で歩いて避難なんてできるのでしょうか?ましてやハンカチを濡らして口元に当てる?時代錯誤の誤った情報です。また、1階の人は、廊下側が火災なら窓から避難することも考えておく必要もあるでしょう。 「学校の消防訓練」が、火災はすべて同じ方法で避難するものだと頭にすり込んでしまっていると考えられます。特に記憶に強く残っているのは、消防訓練・避難訓練に参加しない先生方(職員室の留守番)がいらっしゃったのを生徒達が見て疑問に感じていたことも、大切な命に関わる訓練であることの危機意識・危機認識を弱めたひとつでもあると考えられ、それにより大切な訓練が、どうしても生徒達から見れば「訓練なんて形式だけのこと」と誤解を生んでしまうのです。訓練は『全員参加』が重要なことであり、高見の見物者は不要なのです。これは訓練の質が弱ってしまうと考えられます。ひとつのフィールドの上で災害が発生し、ひとりひとりが様々な判断を余儀なくされ、行動に移す。その中で『客観的に見ようとする見物者』は自分が本当はフィールド外に居ることに気が付いていないのです。このような人が本番(災害時)にエラーを起こしかねません。だって、想定訓練というものには実際には参加していないので、訓練内で発生したエラーを処理することに関わっていません。だから、本番にエラーを起こしてしまうのです。このエラーは「心の訓練」を怠ったことで起こるものです。実技も大切な訓練ですが、そこに至る瞬発力を養うのが「心の訓練」です。心の訓練をしていれば、危機意識が強化されます。すると普段と違うことを感じたとき、即行動できるようになります。人間は元々「大丈夫だろう。自分には関係ない」と心がフェードアウトする心理「正常性バイアス」を持っています。正常性バイアスとは心理学で使われる用語で、人が予期しない事態に直面したとき「ありえない」という先入観や思い込み(バイアス)が働き、起きていることを正常な範囲内だと自動的に考えてしまう心の働きのことで、自分には関係がないなと判断してしまうのです。 「なぜこの訓練が必要なのか!」「この訓練をすることで助かる確率をアップできる!」といった正しい情報を身につければ判断力を強化できます。それが『理解した!』ということです。火災時!なぜ姿勢を低くして逃げるのか?煙から逃げることだと思っている人が多いのですが、実際には煙の中に含まれる強毒『一酸化炭素』から逃げることなのです。その一酸化炭素は体内に取り込んでしまうと、血液中のヘモグロビン(酸素を体中に運ぶ)に酸素より先に結合し体内に酸素が運ばれなくなります。また危険な濃度を超えたものを吸い込むと一瞬で気を失うばかりか死に至らしめます。その一酸化炭素から逃げるために「姿勢を低くする」のです。ハンカチごときでは防げません!また、重要なことは『できる限り低い姿勢』です。床近くは比較的煙が薄く空気と視界が残っています。走って煙の中を通り抜けるのも危険行為なのです。 皆さん『なぜ!!この訓練が必要なのか?』疑問を抱いてください。それも「心の訓練」なのです。 |